大東亜戦争後半、日本人にとって、【悲劇の海峡】【輸送船の墓場】と散文としての表記と認識が先行するバシー海峡です。
帝国海軍航空母艦が無きあと69余年、着々と空母打撃群を編成しようとしている中国海軍艦船にとって、彼らが南シナ海、台湾南端の屏東(ピントウ)半島南端とフィリッピン・ルソン島北端の間の海域、すなわちバシー海峡から西太平洋に出るための海廊は、作戦行動上の要衝であり、地政学的な要衝です。
この地政学的要衝は、アメリカ西岸から、太平洋を超え、南シナ海にいたる海域で、1945年以降、アメリカ第七艦隊による海上覇権の行使で地域の海上秩序を維持してきたアメリカ合衆国の地政学的要衝であり、地政学的用語でいう【アメリカの覇権】下にあります。
一般的に「西太平洋」と呼ばれる太平洋の西部では、長年アメリカ合衆国ハワイ州のオワフ島に司令部を置くアメリカ太平洋艦隊が、同盟国と共同でとり行うRimpac・環太平洋合同演習の実施実績が、先の現実を如実に証明しています。
2007年、中国海軍高官は、訪問先のアメリカ太平洋司令部で(アメリカにとっては)唐突に、そして中国にとっては核心的な意志として、【太平洋分割管理案】を打診しました。これはハワイより東をアメリカが、西の海域を中国が管理するという案です。 それは明確な中国による、空域をも含む海洋覇権への意思表示でした。
関連動画をリンクします。
http://youtu.be/V1SDDUS1EyM
この野望とも取れる中国による、冒険的な海上覇権を目論む背景は別稿にしますが、【バシー海峡】は、中国海軍が西太平洋に出る時の二つの海廊・ルートの一つなのです。
2014.06.20 「南シナ海に夕日がしずむ」http://katsukazan.blog.jp/archives/1004737281.html 投稿文を加筆
以下転載
2013.06.22 (土)
■■■ 櫻井よしこ 「 中国の太平洋進出の野望と焦りが明らかになった米中首脳会談 」
『週刊ダイヤモンド』 2013年6月22日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 990
6月7、8日の両日、米西海岸の美しい保養地に立つアネンバーグ別荘で行われた米中首脳会談の全容についての情報はいまだ明らかではない。したがって、会談の意味について断定は出来ない。そうした中でも確かなことは、米中両国が友好関係の確立を演出したものの、ほとんどの事柄について、合意が得られなかったこと、中国の野望と焦りが明らかになったことなどであろう。
米中関係がどれほど飛躍的に改善されたかを宣伝したのは、中国メディアだった。それはまた、オバマ政権の了とするところでもあり、「8時間にわたる類例のない会談」「オバマ、習両首脳2人だけの朝の散歩での会談」などという肯定的な表現が飛び交った。だが、中身は非常に乏しく、むしろ、対立軸はより明確になったといえる。
双方の思惑がぶつかり合い、基本的に譲歩は困難だと考えられるのが、中国の太平洋進出の野望である。習近平国家主席は首脳会談初日の7日、冒頭こう述べたと、中国通信が伝えている。
「昨年の訪米では、広大な太平洋には中米両大国を受け入れる十分な余地があると語ったが、私は現在もそう思っている」
2012年2月に習氏は副主席として訪米し、当時米国側から非常に冷たい対応を受けた。バイデン米副大統領は習氏を前にして、驚くほど率直な表現で人権問題などを取り上げ中国を非難した。そのときにも語った事実上の太平洋分割統治を習主席は今回も冒頭で述べたわけだ。中国がどれほど強く太平洋進出の野望を抱いているかは数年前の衝撃的な発言からもうかがえる。
08年3月、米太平洋司令官のティモシー・キーティング氏が上院軍事委員会に出席して、艦隊を率いて中国を訪問した折、中国側から太平洋を分割統治しようとの提案を受けたと証言し、米国の対中警戒感は高まった。この太平洋分割統治を提案したのは中国海軍少将、楊毅氏だった。私は11年に楊氏と長時間語ったが、その際に「太平洋分割統治の提案」について尋ねると、氏はこう語った。
「キーティング大将が07年に中国を訪れ、北京の世界貿易センターで会談しました。彼が中国は航空母艦を開発する必要があるのかと問い、私は率直に『ある』と答えました。中国が必要とする空母の数を聞かれましたので、1隻から12隻だと答えると、キーティング大将は笑いました」
ちなみに米国が保有する空母は12隻である。このような会話の先に、楊氏は次のように述べたそうだ。
「中国と米国が太平洋の区域を分けて担当してもよいのではないか。責任の分担だと私は言ったのです。それが後に太平洋を東西に分割する共同管理を提案したと報道され、私は非常に驚きました」
楊氏は恰も冗談話にすぎないかのように語ったが、習主席が昨年、今年と、米国に提案したのは、まさに太平洋の分割統治案である。中国は一度言い出したことは譲らない。中国の発想は、今後も東シナ海、南シナ海での領土領海の拡張を続けるという決意表明であり、周辺国にとっては受け入れ難い。
しかし、この中国の強気な姿勢に脅える必要はない。日本は何よりもまず、目の前の尖閣諸島の危機を乗り越えるために最大限の努力で海上保安庁、自衛隊の力を増強させなければならないが、同時に中国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加してもよいという姿勢さえ見せるほど、追い詰められていることを知っておくべきだ。
TPPへの参加は中国共産党一党支配の終焉を意味することであり、現在の中国にとって参加は不可能であろう。にも拘わらず参加する可能性を論じてまで米中首脳会談を欲していたということだ。中国に国際法、自由、民主主義などの価値観を示し続けていくいまの日本外交は正しいのである。